Contextの次に、受け渡しの問題が出てくる
Repository Contextは、目的、正本、現在地、判断、次アクションを会話の外へ置きます。 それだけでも長期作業はかなり再開しやすくなります。
しかし、仕事を専門ごとに分けたり、別のAIへ渡したりすると、次に「誰が、何を、どこまで引き受けたのか」という問題が出てきます。
Contextが「何を知っているか」を扱うなら、Communicationは「その仕事をどう受け渡すか」を扱います。 高度なAgent間通信基盤を先に作るのではなく、まずプレーンテキストで意味を揃えます。
最小形
Handoff
↓
ACK
↓
Work
↓
Return仕事を渡す
担当範囲、読むべき正本、期待する結果、やってはいけないことを示します。
受け取り方を確認する
単なる「読みました」ではなく、Role、Scope、担当外、停止条件、次アクションを返します。
結果を戻す
何を実施したか、どの正本が変わったか、未解決は何か、次のownerは誰かを返します。
Handoffは、会話全文のコピーではない
良いHandoffは巨大なContext Packではありません。正本がRepositoryにあるなら、Handoffは「どこを読めば現在地へ戻れるか」を短く示せば十分です。
# Handoff
from: website-planning
to: website-build
scope: Repository Context公開ページの実装
read_first:
- REPOSITORY_CONTEXT.md
- docs/SITE_V1_0_SCOPE.md
- docs/INFORMATION_ARCHITECTURE.md
required_result:
- 公開ページを実装する
- mobile / desktopを確認する
- 結果をACKまたはReturnで返す
boundaries:
- 公開方針を勝手に変更しない
- secretをRepositoryへ入れないファイル名やpathだけを人間が次のセッションへ渡し、受け手がRepositoryから文脈を復元する方法を、ここではPath-only Handoff と呼びます。
ACKは「了解」ではない
ACKの役割は、受領した内容の解釈が合っているかを、作業開始前に短く確認することです。 最低限、次が分かれば十分です。
- 何として受領したか
- 自分の担当Scope
- 担当外
- 着手できるか
- 止まる条件は何か
- 次に何をするか
# ACK
source_handoff: handoffs/example.md
status: accepted
role: Web implementation
scope:
- 指定ページの実装
- 表示確認
out_of_scope:
- IAそのものの変更
- production公開判断
stop_conditions:
- 正本間に矛盾がある
- 公開可否が不明
next_action:
- 正本を読んで実装を開始するReturnは、成果と未解決を返す
作業が終わったら、長い作業実況を別チャットへ貼り直す必要はありません。 変更した正本と、残った判断だけをReturnします。
# Return
status: completed
result:
- 指定ページを実装
- build確認済み
changed_sources:
- site/src/pages/example/index.astro
- docs/INFORMATION_ARCHITECTURE.md
unresolved:
- production公開判断
next_owner:
- main session人間を「伝書鳩」にしない
複数のAIセッションを使うと、人間が各チャットの内容をコピーして別チャットへ貼る作業が増えがちです。 RepositoryにHandoffとACKを置けば、人間が渡すものはpathだけにできます。
Human
↓ pathだけ渡す
Handoff in Repository
↓
Receiver reads sources
↓
ACK
↓
Work
↓
Return in Repository
↓
Main session reads resultここで重要なのは、AI同士が自動で会話することではありません。受け渡しの意味が、特定のチャット画面に閉じずに残ることです。
最初は、この3つだけでいい
Routing Engine、Communication Bus、Agent Registryのような仕組みは、多数のAgentを扱う段階で必要になることがあります。 しかし、最初から必要ではありません。
まずRepository Contextで現在地を外部化し、必要になったときだけHandoff / ACK / Returnを足す。 これが受け渡しの最小形です。
Handoff / ACK / Returnで「何を渡すか」が決まると、Git、API、MCP、CLI、Bridgeなど、 異なる環境を「どう接続し、どう運ぶか」という問題が現れます。